土方歳三
はあっ!!
沖田林太郎
甘いっ!!
土方歳三
痛っ! くそっ、まだまだ……
土方は木刀を受けて派手に転がったが、不屈の闘志を見せ立ち上がってきた。
沖田林太郎
大丈夫か、歳三。お前の手製の傷薬、石田散薬でも飲むか? まさに自給自足だな。
土方歳三
馬鹿にするなよ、林太郎。
沖田林太郎
確かにお前は強い。その歳で剣を始めたとは思えない。まさに天賦の才だな。
沖田林太郎
だが……お前は何故、剣を取る?
沖田林太郎
総司が天然理心流を習っているからとか、近藤に勧められたからとか、そんなつまらん理由じゃないだろう?
土方歳三
くだらない。俺はただ……
返答の代わりに繰り出される打ち込み……だが、そこには明らかな迷いがあった。
沖田林太郎
答えられないか……はっ!!
土方歳三
くっ!! くそ……っ!!
沖田林太郎
もう一度聞く。お前は、何故剣を取る?
土方歳三
決まってる。強くなって、武士の中の武士になりたい。それだけだ。
沖田林太郎
それは単純だな?
土方歳三
単純な理由ほど強い。誰より強く、武士らしく生きたいだけだ。それの何が悪い。
沖田林太郎
お前は若い。今はそんな理由でもいいだろう。だが、強くなって……武士になって、その後どうする?
土方歳三
世直しだ。この世の悪を斬って、俺が信じる、俺の望む世にしてやる……!
沖田林太郎
世直しか。お前の決めた善悪で、お前の定めた世にしたいか? 歳三よ。
土方歳三
当然だ……善悪の定めまで他人に委ねる? 俺は御免だ。そんなことも決められない奴がおかしい。
土方歳三
俺の決めたこの世の悪を、命の限り叩き斬ってやる!
既に迷いが消えたのか。その瞳には獣のような激しさが渦を巻き、燃え上がっていた……