オレは着替えるとテラスへ出た。テラスは広く玉砂利があり綺麗に整えられている。
颯さん、覚悟さんに習って、腰を下ろした。
中沢颯
では、いいですね?
中沢颯
禊は、神様に身の穢れや罪を祓うようにお願いする、神聖な儀式です。
中沢颯
欲や雑念を消し、心を無にして祈りを捧げます。
中沢颯
この水は魔を祓う(さかき) の枝で清めてあります。
中沢颯
手桶にこの水を汲み、頭から勢いよく被りなさい。穢れが落ちるまで何度も……
沖田洸
えっ、水ですか? 寒そうですね。
勝覚悟
洸……抵抗しても無駄だぞ? それが禊だ。こればかりは、作法通りにやるしかねえ。
手桶を持ち、颯さんは説明していく。扱う手つきも慣れている。
初めての体験に、水の冷たさに怯んでしまった。
中沢颯
いえ、ダメです。
中沢颯
確かにお風呂は私も好きです。一日の終わりの癒しですよね。
中沢颯
でも、禊では冷たい水で心身を清めます。すぐに温まろうなどと、甘いことは考えないでください。
沖田洸
冷たい……ちょっとずつ身体を慣らして……
勝覚悟
おいおい、プール開きじゃねえんだぞ。そんなにビビってやっても意味ねえだろ。
中沢颯
いいでしょう。私が手本を見せます。
中沢颯
魂の穢れを祓うように、潔くやりなさい。このように……
中沢颯
我が身、魂の罪、穢れを祓いたまえ……
颯さんは、勢い良く手桶から水を被った。
水の冷たさに戸惑うことなく、凜とした佇まいを保っている。
沖田洸
(颯さん、迷いがないな……心身を清める心構えができてるのか……)
勝覚悟
我が身、魂の罪、穢れを祓いたまえ……
覚悟さんも、しっかりと水を被る。
この時ばかりは覚悟さんも己の精神とむきあうように、そっと呼吸を整えていた。
勝覚悟
なんてことない。この程度。心身が清められると気持ちがいいぜ。
中沢颯
洸。いいですか。水が冷たいと思うから冷たいのです。心を無にすることです。
沖田洸
はい。
目を閉じて、視界を遮断する……
沖田洸
(そうか。目を閉じて、音も聴かず、全てを忘れて無の状態になれば……)
沖田洸
我が身、魂の罪、穢れを祓いたまえ……
沖田洸
……………………………………………………
沖田洸
……なんだか、心が洗われたような気がします。気合いが入りました。
中沢颯
それはよかった。洸……貴方にもわかったようですね。
中沢颯
今後は時間があれば禊を行い、心身の穢れを落としておきなさい。
ここは、いつでも使える様にしておきます。