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オレは、気づけば魅入られたかのように手を伸ばす。
そして、刀を手にした……柄をとり、重みを確かめる。
- 沖田洸
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この感じ、懐かしい……
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光沢のある鞘はスッと光を帯び、それから小さく震えた。
- 沖田洸
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それに、何故か不思議と手に馴染む……
- 中沢颯
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まさか「壱式」が、洸を認めたというのですか?
- 勝覚悟
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洸。鞘から抜いてみな。指を切るなよ。
- 沖田洸
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はい……
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鯉口を切り引き抜くと、美しい白刃が姿を現わす。
- 沖田洸
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綺麗、だ……
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暗がりでもその存在を示すように、刃は朱く光を放った。血に濡れたような朱が目を奪う。
- 勝覚悟
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ほら、な? オレの見込んだ通りだったろ?
- 中沢颯
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ええ……驚きましたね。
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二人は息を飲むが、既にオレを止める様子はなかった。
- 中沢颯
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洸。「片喰刀」は、誰にでも扱えるわけではありません。
- 中沢颯
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新徴組の御役目のため、「御霊降ろし」をして打ち直された特別な刀です。
- 中沢颯
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新徴組を預った庄内藩酒井家「片喰紋」にちなんだ「片喰刀」はこの世に、三振りしかありません。
- 中沢颯
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片喰刀は己が認めた者にだけ、力を貸します。
- 中沢颯
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その「壱式」には、かつての新徴組隊士、中村信光の御霊が降ろされています。
片喰刀の中で最も気難しく、扱いにくい刀です。