| |
どうにも、おかしなことになってきた。
ルキ、と言ったか。その担任がマックスと知り合いだったらしく、ルキとその仲間と行動することになったのだが……。
「こんにちはッ。ボク、ミュウ。よろしくねッ!」
そいつは屈託の無い笑顔で両手を突き出す。
思わずつられて差し出した手を握り締めると、ブンブンと大きく上下に手を振られる。頭一つ分ほどおれの方が大きいが、不意をつかれたその行動に思わず体勢を崩してしまう。
戦場には不釣り合いなその格好。それが第一印象だった。首からぶら下げたアンクレットや赤と白が印象的なワンピースとハイソックス。まだ履き潰されていない小さな革靴。そして不釣り合いなほど大きな「剣」。
そこら辺の、という言い方は間違いかもしれないが、この間立ち寄った町の宿屋の給仕も同じような格好をしていたような気がする。
これが旅支度なのかと思うと感覚を疑いたくなってくる。そういうおれもマックスに渡された道具一式を、ただ持ち歩いているだけだが。
まぁこいつ―――ミュウの事を一言で言えば、「変な奴」だと正直思った。
俺の手をしっかりと握った「変な奴」は一緒にきたのだろう、仲間達と話し合っている。話に集中しているのか、しばらく手を離す気はないらしい。時には大声で、時には小声でじゃれ合っている。表情もコロコロとよく変わる。さっきまで笑顔を浮かべていたと思ったら、子悪魔のように意地悪そうに微笑んだり、膨れっ面を浮かべたり。
ミュウが口の端を吊り上げたのが気になって、会話の内容に耳を傾けると、ふいに会話の一節が流れ込んできた。
「リュート、最近太ったんじゃないの〜? さっきの動き、キレが無かったよぉ〜」
子悪魔の表情で、目線の先にいる青色の髪と栗色の目をした少女に意地悪くささやく。
マックスの後輩で、聞いた話ではまだ学生らしい。言われてみればその様子はチキュウでの中高時代、女子生徒同士が話を咲かせている姿に似ている。
そんなことを考えていると、二人のやりとりは白熱してきたようで、
「……ミュウさん!! ちょっとお待ちなさい!!」
それまですまし顔でミュウの話を横へ流していた少女――リュートが突然、激昂したようにハスキーボイス気味に叫んだ。
リュートがずんずんと鬼気迫る表情でおれの方に詰め寄って来る。大きく手を振りかぶると、目の前のミュウを捕まえようと大きくスイングする。
ブンッ
気持ちよくリュートの平手が空を切った。
平手をかいくぐったミュウは子猫のようにおれの横をするりと抜けると、大柄なマックスの後ろに隠れる。マックスは片手を額に当て、呆れ顔で「やれやれ」といった表情を見せている。イグリアスも片手で頭を抱えながらため息を付いている。ミュウとリュートは二人の間をちょこまかちょこまかと右へ左へ動き回っている。
両者の立ち位置が決まったのか、ミュウはマックスの背後から顔を突き出し、
「リュートがいけないんだからねッ! この間の練習試合でボクの事、太ったなんて言うんだからぁッ!!」
大きく顔を崩し力強くあっかんべー。リュートはすまし顔で、しかし怒りを滲ませながら言い返す。
「何ヶ月前の事を根に持っているのですか? だから、あなたは子供っぽいのだと申しているのです」
「この間じゃんかッ!半月前ッ!!」
すぐ様ミュウは反撃に移る。言葉数はリュートがバズーカなら、ミュウはマシンガンといった所か。
「あなたの動きが鈍いからそう申したまでです。それに私は太ったワケではありません。これもたゆまないトレーニングのたまものですわ。あなたと違って私のは贅肉ではございませんの。オーホッホッホッホ!」
リュートの一斉砲火がターゲットを撃墜する。グゥの音も出ない様で、マックスの後ろでミュウの背筋がビクッと伸びる。
「ぼッ・・ボクだって太ったわけじゃないもん! 『セイチョウキ』だからだもん!! 『女らしく』なってるだけだもんッ!!!」
一般論で反撃をするミュウ。だが、その言葉を受けたリュートの口がニヤリとつり上がる。
|
|
|